(1)商標法
商標の使用義務は、商標登録の要件として、商標法第3条第1項柱書に規定されています。
(商標登録の要件)
第三条 自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。
この規定の解釈については、工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第21版〕で説明されており、「他人に使用をさせるものでもよいのか」という問題については、これを否定して、商標登録は「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」に限っているとしています。
(2)商標審査基準
上記法律の運用については、商標審査基準に記載されています。
https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/trademark/kijun/index.html
以下、商標審査基準の抜粋です。
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2.「使用をする商標」について
(1)省略
(2)指定役務が、例えば、次のような場合には、商標を使用できない蓋然性が高いものとして、本項柱書により登録を受けることができる商標に該当しないと判断する旨の拒絶理由の通知を行い、出願人が指定役務を行い得るか確認する。
(例)指定役務に係る業務を行うために法令に定める国家資格等を有することが義務づけられている場合であって、願書に記載された出願人の名称等から、出願人が、指定役務に係る業務を行い得る法人であること、又は、個人として当該国家資格等を有していることのいずれの確認もできない場合。
[コメント]
「銀行業を業務とする者は、法律に定められた以外の他の業務を営むことができないので、『自己の業務に係る商品について使用』をするとは認められない」とされた審決例があります。【種別】拒絶査定不服の審決【審判番号】不服昭和57-25974
(3)指定商品又は指定役務について、(ア)又は(イ)に該当するときは、商標の使用及び使用の意思があるかについて合理的な疑義があるものとして、本項柱書により登録を受けることができる商標に該当しないと判断する旨の拒絶理由の通知を行い、下記3.に従い商標の使用又は使用の意思を確認する。ただし、出願当初から、出願人等における商標の使用又は使用の意思があることが確認できる場合を除く。
(ア)第2条第2項に規定する役務(以下「小売等役務」という。)について
①「衣料品、飲食料品及び生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」(以下「総合小売等役務」という。)に該当する役務を個人(自然人をいう。)が指定してきた場合。
②総合小売等役務に該当する役務を法人が指定してきた場合であって、「自己の業務に係る商品又は役務について使用」をするものであるか否かについて調査を行っても、出願人等が総合小売等役務を行っているとは認められない場合。
[コメント]
「衣料品、飲食料品及び生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」は、百貨店などが該当します。
③類似の関係にない複数の小売等役務を指定してきた場合。
(イ)、(ア)を除く商品・役務の全般について1区分内での商品又は役務の指定が広い範囲に及んでいる場合。
3.「使用をする商標」であることの確認について
(1)「使用をする商標」であることは、指定商品又は指定役務の各区分において類似群(類似商品・役務審査基準における類似群をいい、類似関係にあると推定する商品又は役務をグルーピングしたものを指す。)ごとに明らかにする必要がある。
(2)出願人等における商標の使用又は使用の意思については、商標の使用の前提となる指定商品又は指定役務に係る業務を行っているか否か又は行う予定があるか否かを通じて確認する。
(3)業務を行っていることの確認について
省略
(4)業務を行う予定があることの確認について
(ア)出願人等が出願後3~4年以内(登録後3年に相当する時期まで)に商標の使用を開始する意思がある場合に、指定商品又は指定役務に係る業務を出願人等が行う予定があると判断する。
(イ)指定商品又は指定役務に係る業務を出願人等が行う予定があることの確認のためには、商標の使用の意思を明記した文書及び予定している業務の準備状況を示す書類の提出を求める。なお、商標の使用意思が明確でない場合や当該予定している業務の準備状況に疑義がある場合には、必要に応じその事業の実施や計画を裏付ける書類の提出を求める。
[コメント]
事業計画書を提出しても、なお、使用について疑義がある場合には、さらに「計画を裏付ける書類」の提出が求められます。
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以上